人が集い、安心して働ける。これからの障害者作業所のかたちへ

かつて七宝焼きや雑巾づくりを通じて利用者一人ひとりの個性が輝いていた障害者作業所が、新天地でリニューアルしました。

新しい拠点では、箱の組み立て作業を中心に、より快適で安心して働ける環境が整えられえています。

スロープのある玄関や、バリアフリートイレ、広々とした作業スペース、交流の生まれるキッチンなど、使う人の目線に立って丁寧に設計されたこの作業所は、ただ「作業をする場所」にとどまらず、人と人がつながり、心地よく過ごせる「居場所」としても機能しています。

場所	神奈川県横浜市
建物データ	新築、戸建て、2階建て

街になじむ、自然でやさしい外観

建物の外観は、まちの景観に溶け込むよう配慮したシンプルで温かみのあるデザインです。

福祉施設として、過度に目立たず、地域の一員として自然にそこにあるような佇まいを目指しました。

この作業所では、以前は利用者の方々が七宝焼きや雑巾など、手仕事のぬくもりが伝わる作品作りに取り組んでいました。

現在は新しい拠点に移り、箱の組み立て作業を中心に活動しています。

静かで落ち着いた環境の中、集中して作業に取り組めるよう、建物全体の雰囲気や使いやすさにもこだわっています。

車いすで入りやすい、バリアフリーな動線

 

玄関前には緩やかなスロープを設け、車いすの方も安心して出入りできるよう配慮しました。屋内へのアプローチには段差がなく、上がり框もフラットな設計にすることで、車いすを利用する方がスムーズに移動できます。

細かな段差や床の素材にもこだわり、快適で安全なバリアフリー動線を実現しました。

作業に集中できる、ゆとりある空間設計

作業室は、一人ひとりの動きや作業スタイルに合わせて、ゆとりあるスペースを確保しています。

車いすの移動や作業中の動作もスムーズに行えるよう、机の配置や通路幅に余裕をもたせ、圧迫感のないレイアウトを採用しました。

自然光が優しく差し込む明るい室内は、気持ちも落ち着き、作業に集中しやすい環境です。利用者の皆様が安心して作業に取り組めるよう設計しています。

「働きやすさ」はもちろん「過ごしやすさ」も大切にした空間づくりが、この施設の大きな特徴です。

コミュニケーションが生まれる工夫

作業だけでなく、ちょっとした会話や交流も大切にできるよう、空間づくりにもひと工夫を加えています。

なかでもカウンター付のキッチンは、食べ物や飲み物の受け渡しや休憩のひとときに、利用者とスタッフが自然と顔を合わせられる場所として機能しています。

作業に集中する時間と、リラックスして人と関わる時間のメリハリを生むことで、一人ひとりが無理なく心地よく過ごせる環境づくりを目指しました。

日々のちょっとしたやりとりの中で、笑顔が生まれ、関係性が育まれていくような「つながり」を大切にするための工夫がこの作業所のあちこちにちりばめられています。

多様なニーズに対応する福祉設備

安心して日常を過ごせるよう、施設内には多様な身体状況に対応できる設備を整えました。

トイレは車いすでの利用を想定した広めの個室を2つ設置しています。また、オストメイト対応設備も完備しており、排泄ケアが必要な方にも配慮したつくりとなっています。

また、急なトラブルにも対応できるよう、簡易的なシャワールームも設置し、清潔さやプライバシーを保ちながら、安心して使える設備となっています。

誰もが自分らしく過ごせるように、利用者一人ひとりの「ちょうどいい」を形にする福祉環境を大切にしています。

スタッフの働きやすさにも配慮

利用者が安心して過ごせる環境を支えるのは、日々現場で関わるスタッフの存在です。

この作業所では、支援する側の負担を軽減し、働きやすさを高める空間づくりにも力を入れました。

2階には見通しの良い広々とした事務室を設置し、事務作業だけでなくスタッフ同士の打合せにも活用できるよう設計されています。

動線も無理がなく、利用者のサポートや作業の見守りがスムーズに行えるよう配置を工夫し、働くスタッフにもやさしい設計が、チーム全体の安心感と、よりよい支援に繋がっています。

屋外でも過ごしやすい、開放的なバルコニー

2階には、光や風を感じながら心身をリフレッシュできる、開放的なバルコニーを設けました。

広さにゆとりがあるため、ちょっとした気分転換にも使える空間になっています。

室内とはまた違った空気管の中で過ごす時間は、気持ちを切り替えたり、コミュニケーションを促したりする場にもなります。

「外に出る」という小さな行動が、暮らしや働くことにちょっとした豊かさをもたらす、そんな日常の中に自然と取り入れられる屋外空間として整えました。

 

ご利用ありがとうございました！

15-1017