高齢のご家族や車いす利用者がいるご家庭では、住まいの安全・快適を考えるうえで、玄関や庭、駐車場といった「外構」のバリアフリー化はかかせません。
しかし、ただ段差を無くすだけでは、本当に安心できる住環境とは言えません。実は、わずかな段差や、門扉の開けにくさ、ポストやインターフォンの位置など、ちょっとした「使いにくさ」が、外出する意欲そのものを奪ってしまう事も少なくありません。
「今日は面倒だからやめておこう」
そんな気持ちが積み重なることで、外出する機会の減少や、引きこもり、心身の健康リスクにもつながってしまいます。
玄関前の動線、門扉、駐車場、ちょっとした設備までお家の外回りをトータルに整えることで、移動のストレスや不安を減らし、毎日の暮らしが格段に楽になります。
そこで今回は、段差の解消以外の見落としがちなポイントを含めた「外構バリアフリーリフォームで押さえるべき6つのポイント」をわかりやすくご紹介します。
これからリフォームを検討する方はぜひ参考にしてみてください。
外構の段差にフォーカスしたバリアフリーリフォームは下記リンクをご覧ください

快適な“おうちの入り口”を作る バリアフリー玄関ドアの実践アイデア
玄関や門扉は毎日必ず通る「おうちの出入口」です。
バリアフリーリフォームをする際は、ちょっとした段差だけに目を向けずに、車いすを使う方や足腰に不安のある方が感じやすいちょっとした不便を解消するための工夫を盛り込んでおくと、外出のハードルが大きく下がります。
「出かけたいけど面倒くさい…」という小さなストレスが積み重なると、外出の機会が減り心身の健康に影響することもあります。
ここからは、「快適な入口」を作るためにチェックしてきたいポイントやヒントをご紹介します。
スライド玄関ドアにリフォームするメリット|開き戸から引き戸へ変更する
玄関のドアは開き戸が主流ですが、開き戸は扉を開けるときに一歩(半身)下げてから扉を引くという動作があるため、身体があおられて転倒する危険があります。また、引き戸ならドアを通過するときに扉を押さえなくてよいので通過しやすい利点があります。
そのためバリアフリーリフォームをする場合は、そのままの姿勢で開閉できる引き戸がおすすめです。
可能であればショールームなどに行って、軽い力で楽に開け閉めできるかどうかも確認しましょう。断熱引き戸は複層ガラスなどの重量で重くなっていることがあります。開閉をサポートする機能付きのものもメーカーによってラインナップされているので、そちらを選ぶとさらにドアの開閉が楽になります。
また、手すりも動作に合わせて設置をするとさらに安全になります。介護保険の住宅改修などを利用して、トータルでリフォームを考えるとよいでしょう。
玄関ドアの有効開口をしっかり確保:車いす
車いすを利用する場合は、有効開口を確認しておきます。有効開口とは、開き戸や引き戸などで、人の出入り・物の運搬のために実際に有効な働き寸法や開口面積のことです。
自走通行する場合の目安は800mm以上、介助者が押す場合の目安は750mm以上の有効開口が必要です。各メーカーのカタログに記載されているので、必ず確認しましょう。
【参考】車いすを使用する場合の通路幅の目安(国土交通省 基本寸法より抜粋)
寸法 | 意味 | |
---|---|---|
80cm | 車いすで通過できる寸法 | |
90cm | 車いすで通過しやすい寸法 通路を車いすで通行できる寸法 |
|
120cm | 通路を車椅子で通行しやすい寸法 人が横向きになれば車椅子使用者とすれ違える寸法 杖使用者が円滑に通過できる寸法 |
|
140cm | 車椅子使用者が転回(180度方向転換)できる寸法 杖使用者が円滑に上下できる階段幅の寸法 |
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150cm | 車椅子使用者が回転できる寸法 人と車椅子使用者がすれ違える寸法 |
|
180cm | 車椅子使用者が回転しやすい寸法 車椅子使用者同士がすれ違える寸法 |
握りやすく使いやすい!バリアフリーに適した玄関ドアの取っ手選び
扉の取手はご利用者様の状態をよく考慮して選ぶことが大切です。
引き戸では棒状の取手にすると手や指に力が入りにくい人でも開閉しやすくなります。無理なく掴んで開閉できる取手を選んでください。ただし、戸を開いた時に取手の引き残し分だけ有効開口が狭くなるので、取手の幅には注意が必要です。
手や指に力が入りづらくドアの開閉が難しい場合は、電動で開閉できるものを選択肢に入れます。電動開閉については、バリアフリー対応の玄関ドアにオプションでラインナップされています。
鍵の開閉がラクになる!玄関におすすめの電子錠・スマートロック・スマートキー

LIXIL TOSTEM エルムーブ2(https://webcatalog.lixil.co.jp/iportal/CatalogViewInterfaceStartUpAction.do?method=startUp&mode=PAGE&catalogId=15308730000&pageGroupId=1&volumeID=LXL13001&designID=newinter&pagePosition=R)より引用
電子錠・スマートロック・スマートキーは、メーカーによって、スマートフォンやカードキー(タグキー)、リモコンなどがあります。
これらを導入すると、鍵を差し込んで回すという動作が不要になるため、スムーズに開錠して出入りできるようになります。テレビモニター付きのインターフォンと連動できれば、お客様を迎えるときも便利です。
ただし、メリットもあればデメリットもあり、電子錠・スマートロック・スマートキーは、オートロック式になっているものも多く、鍵になるものや暗証番号を忘れると締め出されてしまいます。また、電池で動くタイプのものは電池切れにも注意が必要です。
物理的な鍵と特徴が違い一長一短あり高額なため、ご利用者様の身体状況や環境に合わせてよく検討が必要です。
玄関ドアにドアクローザーを設置して開閉の負担を減らす

RYOBI ドアクローザーグレード1シリーズ
重たいドアが勢いよく閉まると、怪我や騒音など思わぬトラブルを招きます。そこで必要なのが「ドアクローザー」です。
ドアクローザーは、玄関ドアの上部に設置されているアーム付きの装置です。これがあることで、ドアが開いた後、ゆっくりと自動的に静かに閉まるように調整されます。
ドアクローザーが無ければ、開いたドアは勢いよく「バンッ」と大きな音を立てて閉まってしまうため、風などの影響を受ける玄関ドアには必須の装置です。
ドアクローザーは長年使っているうちに、油圧が抜けたりネジが緩んだりして、動作が鈍くなることがあります。
- 閉まるスピードが速すぎる
- 途中でガクンと急に閉まる
というような症状があれば、調整や交換が必要です。リフォームを検討する際は、現場調査などで専門家が立ち会うことも多いので、一緒にチェックしてもらうと安心です。

ダイケン スライデックス ソフトクローザー

ダイケン スライデックス ソフトクローザー
引き戸用のドアクローザーもあります。こちらは手を離したらすぐに自動で閉まってこないように、「ストッパー」などを併用し、全開または任意の位置でしっかり止められるようにするのがポイントです。
これにより、ドアを勢いよく開けてしまったときにドアが跳ね返ってくることを防げます。
訪問介護・緊急時に便利なキーボックス
在宅介護や訪問介護を受ける方が増える中、「玄関の鍵管理」は意外と見落とされがちな話題です。
特に家族が不在な時に、訪問介護スタッフや緊急時の救急対応をスムーズに行うためには、キーボックスの設置が非常に便利です。
キーボックスとは、暗証番号やダイヤル、電子ロックで管理できる「鍵の保管ボックス」のことです。玄関近くに設置しておけば、介護スタッフや救急隊員が登録された方法で鍵を取り出し、速やかに自宅に入れるようになります。
介護を受けるご本人が玄関まで行って鍵の開け閉めを行うのは、体力的にも精神的にも負担が大きいです。キーボックスがあれば、事前にスタッフに番号を伝えておくだけで、介護スタッフが自由に入室でき、負担を軽減することができます。
また、キーボックスで物理的に鍵を置いておくのが不安な場合は、電子錠やインターホン連動で遠隔で鍵の開閉ができるようにしておくと負担が軽くなります。
玄関前に荷物置きスペースを作る|鍵の開閉時に役立つ便利アイデア

川口技研 ホスクリーン
必須ではありませんが、玄関前にちょっと荷物を置けるスペースがあると、出入りがとてもスムーズになります。
例えば杖を持っている方なら、鍵を開けるときに杖をドアに立てかけていませんか?
しかし、その杖が倒れてしまった時、いちいち屈んで拾うのは面倒ですよね。
そんなときのために、杖をひっかける場所や、一時的に立てかけるスペースを作っておくと、とても便利です。小さ目の傘立てでも大丈夫ですよ。
また、シルバーカートや荷物を持っている方なら、鍵を開ける間だけ「ちょい置き」できる場所があると、動きがスムーズになります。狭い玄関先ならば、リフォームのタイミングで、カートを横によける場所の確保しておくと良いでしょう。少しの工夫でストレスは減らせるかもしれません。
「ちょい置き」スペースは、雨の日ならさらに便利さを実感できます。
濡れた地面にカバンや買い物袋を直接置くのは抵抗がありませんか?これも荷物をぬらさずにおける場所が確保されていれば安心です。
普段の動きを振り返ってみて「玄関前でひょいと物を瞬間、あるかも」と思った方は、リフォームのタイミングで荷物置きスペースを作ることをおすすめします。
ちょっとした工夫ですが、毎日の出入りがグッと楽になりますよ。
傘置き場と濡れた車いすを拭くスペースの確保をしておくと雨の日も安心

森田アルミ Vik「ヴィク」
上記にも少し記述しましたが、晴れた日は気にならなくても、雨の日の玄関前は意外と困ることが多いものです。濡れた傘をどうしよう、車いすのタイヤが濡れてびしょびしょになってしまった…そんなお悩みはありませんか?
帰宅時に玄関先で傘の扱いに困った経験は誰にでもあるかと思います。そんな時に「傘のちょい置き場」があると便利です。
濡れた傘をそのまま持ち込むと、水滴で床が滑りやすくなり、転倒の危険もあります。玄関脇に一時的な傘置きスペースを確保しておくと、濡れた傘をすぐに置けて安心です。市販の傘立てでもいいですが、ちょっと傘をひっかけておくフックなどがあるだけでも便利さが違いますよ。
また、車いすを利用する方は、玄関内でも外でも大丈夫ですが、濡れた車いすのタイヤやフットレストなどを拭くためのスペースやタオルを置いておくスペースを確保しておくと安心です。
座位を保持できるなら、一時的に腰掛けられるベンチなどを用意しておくと、利用者も介助者も楽に車いすを拭けるのでおすすめです。
門扉もスライド式にする:玄関と同じく動線をスムーズに

(三協アルミ スライド門扉 レナードより引用 https://alumi.st-grp.co.jp/products/gate/gatedoor_slide/renard/detail1.html)
玄関ドアと同じように、門扉もスライドさせる引き戸タイプを選びます。開き戸は扉を開けるときに一歩(半身)下げてから扉を引くという動作があるため、身体があおられて転倒する危険があるためです。また、引き戸ならドアを通過するときに扉を押さえなくてよいので通過しやすい利点があります。

(三協アルミ スライド門扉 レナードより引用 https://alumi.st-grp.co.jp/products/gate/gatedoor_slide/renard/detail1.html)

(三協アルミ スライド門扉 レナードより引用 https://alumi.st-grp.co.jp/products/gate/gatedoor_slide/renard/detail1.html)

(三協アルミ スライド門扉 レナードより引用 https://alumi.st-grp.co.jp/products/gate/gatedoor_slide/renard/detail1.html)
また、引き戸であること以外も玄関ドアと考え方は同様で、以下の内容をチェックします。
- 地面にレールなど引っかかりやすいものや、つまずきやすい要素がないものを選ぶ
- 錠前は手の届きやすい高さのものを選ぶ
- 車いす利用の場合は、有効開口に余裕のあるものを選ぶ

手に届きやすい高さを考える:インターフォンとポストの設置ポイント
玄関周りのバリアフリーを考える上で、忘れがちな周囲の設備として、インターフォンやポストがあります。
必ず使う場所だからこそ、設置場所や設置する高さに配慮することが、バリアフリーの第一歩です。ここでは使いやすさを重視した設置ポイントを紹介します。
インターホンの最適な設置高さ
インターホンは「親機(室内用)」と「子機(屋外用)」の2つに分かれます。それぞれに適した設置場所を押さえることが、使いやすさと安全性につながります。
室内で使う「親機」のポイント
親機は室内の壁に取り付ける操作パネルです。
親機は、誤動作を防ぐため、周囲20cm四方ほどのスペースを空けて設置することが基本です。さらに、電子レンジやテレビ、無線LANといった電波を発する機器の近くには、干渉によって動作不良を起こすので設置しない方がよいとされています。
親機の設置高さは使用する人によって使いやすい高さが異なりますが、目線の高さに合わせるのが基本です。
一般的には床から145cm程度に設置することが多く、これは大人でも子供でも問題なくモニターが確認できる高さだと言われています。
車いす利用を想定する場合は、車いす利用者の目線の高さに合わせて90~120cmの高さが推奨されています。
同居する家族がおり、複数人の使用が考えられる場合は、その家でメインに使う人が一番使いやすい高さに合わせて調整することが大切です。
屋外で使う「子機」のポイント
屋外に設置する子機は、防犯性にも関わる重要な設備です。子機の高さを間違えると、訪問者の顔が映らずに「この家は顔を移さずに済む」と思われ、防犯性が下がる可能性があるからです。
そのため、顔がきちんと映る高さと、ボタンが押しやすい高さを両立させる必要があります。
一般的には床から145cm前後が標準ですが、車いす利用者に配慮する場合は90~120cmに設置されることも多いです。
来客の顔が映るかどうかは、インターホンと来客の距離も多少関係するため、来客の立ち位置が予測できない場合は、広角カメラを搭載したインターホンを選ぶと、死角を減らし、防犯性を高めることができます。
また、高さだけなく、設置する場所も意外と重要です。インターフォンは住人と訪問者を関節的につなぐ機能を持っているだけでなく「ここから先は許可なく入ってはいけない」という意思表示になります。
玄関ドア脇に設置すると、オープンで接しやすい印象になる反面、悪質業者や訪問販売員なども敷地内に招き入れてしまいます。玄関ドアとは別に門扉がある場合はそちらの方につけることも選択肢の一つです。
ポストの位置選びでバリアフリーを実現

LIXIL 機能門柱FKより引用(https://www.lixil.co.jp/lineup/gate_fence/function-fk/)
ポストを設置する高さは、地面から120~130cmが一般的です。車いすを利用する場合は、もう少し下げて、手が自然に伸ばせる位置を確保します。
また、ポストはインターホンと同じように、住人と訪問者を関節的につなぐ機能の他、「ここから先は許可なく入ってはいけない」という意思表示も兼ねています。そのため、玄関ドアから離れた位置に設置すると、結果的に防犯性が高くなります。
一方で、室内で応対するインターホンと違い、ポストは玄関から出て郵便物を取りに行く動作があります。距離によっては不便に感じることがあるため、利便性を考えると玄関ドアの近くにあった方がよいかもしれません。
防犯性と利便性どちらをとるかは、それぞれの価値観によりますので、よく検討が必要です。
また、ポストはサイズも重要です。届いた郵便物が投函口から少しはみ出している状態を見かけたことはありませんか?
新しくポストをつける場合は大き目のものを選ぶと安心です。具体的には、各種郵便サービスの規定値から考えて投函口は40cm×30cm×5cmが収まる大きさのもの、内容量はA4サイズの物が入ると快適に過ごせるかと思います。通販を利用する方は配達物が入るサイズを探しておくと安心です。
インターホンもポストも「近づける環境」をセットで考える
インターフォンもポストも「使いやすい高さ」と「アプローチしやすい環境」の2つが揃ってはじめて、バリアフリーとなります。車いすを利用する方、杖を利用する方、全ての人が安全・快適に過ごすために、周囲の広さ・床面の滑りにくさ・段差を無くすなど、細かな部分まで丁寧に配慮することが、暮らしやすさにつながります。
雨や日差しを防ぐオーニングの利便性

三協アルミ カフェリオより引用(https://alumi.st-grp.co.jp/products/deck/awning/caferio/detail1.html)
外構リフォームを考えるとき、つい「段差」や「手すり」といった目に見えるバリアフリー対策に目が行きがちですが、実は“オーニング(可動式の庇)”も、バリアフリーの観点で非常に効果的なアイテムです。
オーニングは、建物の外壁や玄関まわり、テラスなどに取り付けることで、雨や直射日光を防ぐ屋根代わりの役割を果たします。これがあるだけで、車いすや杖を使う方が玄関で立ち止まる場面を、より快適で安全なものに変えることができます。
介護を伴う外出時には、玄関前や駐車場周りでも動作が増えます。車いすの乗り降り、荷物の受け渡しなど、玄関先で立ち止まる時間が意外と長いものです。
そんな時、一時的に日差しや雨を遮るオーニングがあることで、介助する方もされる方も負担がぐっと減り、よりスムーズな動線が確保できます。
また、夏場の直射日光は想像以上に体力を奪います。庭やテラスなどで過ごす時間が長い場合は、必要に応じて屋根の代わりになるものがあると、熱中症のリスクを下げることができます。
オーニングには手動で開閉するタイプから、リモコンやスマホで操作できる電動式、さらに日差しや風を感知して自動で開閉する高機能モデルまで様々な種類があるので、設置場所や利用する方の動作、金銭面などに合わせて選ぶことで日々の快適さに大きく貢献するでしょう。
リビングの窓を玄関にした際、オーニングを設置した施工事例
画像は駐車スペースから直接リビングへ入れるよう、リビングの窓を玄関にした施工事例です。
出入り口にしたリビングの窓にはオーニングを設置し、その下に段差解消機を設置しました。
これにより、駐車場から降りてすぐ、雨に濡れずに段差解消機を経由してリビングに入れるようになりました。
参照:施工事例
駐車場周りを整備する:カーポートと電動門扉の導入

三協アルミ FⅡ-RS(片側支持タイプ)より引用(https://alumi.st-grp.co.jp/products/garage/carport/f2/detail1.html)
家族の送り迎えや外出時に毎日のように使う「駐車場周り」も、バリアフリーを考える上では重要なポイントです。
車いすを利用して乗り降りしたり、足腰に不安がある方が乗り降りしたりする場合、スペースが狭かったり、雨風が強かったりすると、ちょっとした動作でも大きな負担になります。
また、車から降りてから玄関までの動線も、屋根が無かったり、門扉の開閉に戸惑ったりと、見落としがちなバリアが潜んでいます。
そこでおすすめなのが「カーポート」や「電動門扉」といった設備の導入です。車いす利用者や高齢者にとって快適で安全な動線を確保し、出入りの負担をグッと減らすことができます。
ここからは以下の3点について詳しく説明していきます。
- 乗り降りするスペースを確保する
- カーポートを設置するメリットと注意点
- 電動門扉で楽に出入りするためのポイント
乗り降りするスペースを確保する
駐車場のバリアフリーを考えるためにまず必要なのが、「乗り降りがしやすいスペース」を確保することです。特に車いすを利用する場合、車に乗り込む際には「段差」という大きなハードルがあります。
この乗車する際の段差をどう乗り越えるかというのは、あらかじめしっかり検討しておく必要があります。
たとえば、介助者が人力で持ち上げて乗り降りをサポートする場合、車いすの移動スペースと介助者が乗車をサポートする際のスペースの確保が必要になります。また、折りたたみ式のスロープを用意して、車いすで乗り降りをする場合は、スロープを掛ける分のスペースが必要です。
国土交通省が発表している「車椅子使用者用駐車施設(ハード)に関する基準及び実態調査結果について」には、車いす使用者が安全に乗降できるよう、車いす使用者用の駐車施設では、車いす利用者の乗降スペースを確保することを鑑みて、幅は3500mm以上とすることが基準とされています。
もちろん、個人宅でその広さを確保するのは難しいかもしれません。
しかし、限られたスペースでもどこに余白をとるか、どこに動線を確保するかを考えることで、実用的な乗降スペースを作ることは十分に可能です。
たとえば、片側に広い余白を設けることで、車いすが安全に横付けできるスペースを作る、あるいはカーポートの柱の位置を工夫してドアの開閉を邪魔しないようにするなど、ちょっとした設計の工夫が大きな違いを生みます。
毎日の動作をラクに、安全にするために、駐車スペースのバリアフリー設計は妥協せず、しっかりと計画することを推奨しています。
カーポートの利点と設置のポイント

三協アルミ ウェルハート より
車いすや杖を使う方にとって、屋外での車の乗り降りは天候の影響を受けやすく、負担の大きい動作です。そこで活躍するのが、玄関や駐車スペースに設置する「カーポート」です。
国土交通省が発表している「車椅子使用者用駐車施設(ハード)に関する基準及び実態調査結果について」には、「屋外の駐車施設に屋根もしくは庇を設けることが望ましい」とされています。
このガイドラインは公共空間を想定したものではありますが、個人宅においてもその考え方は非常に重要です。
カーポートを設けることで、まず大きなメリットになるのが、雨や雪からの保護です。悪天候の日でも、乗り降りの際に濡れにくくなり、冬場には雪の積もった車の雪下ろしや、凍結した通路での滑りのリスクを低減することができます。
特に車いすや歩行補助具を日常的に使用する方にとっては、滑りやすい床は転倒リスクが高く、怪我へとつながる危険な場所です。屋根があることで、日常の安全性が大きく向上します。
カーポートの設置にあたっては、単に車を覆うだけではなく、人が乗り降りするスペースまでしっかりカバーできるサイズと形状を選んでください。
せっかくカーポートを設けても、ドアを開けたら雨がふきこんできたり、車いすを転回するスペースが屋根の外では意味がありません。乗降の動線や玄関までのアクセスを考慮した設計が必要です。
また、柱の位置にも注意が必要です。車いすでの移動やドアの開閉の邪魔にならないように設計をする必要があります。土地によっては、風に強いものや、雪に耐えられる強度を選ぶことで、より安心して長く使うことができます。
カーポートは単なる屋根でなく、快適な乗降動線を支える重要なバリアフリー設備のひとつです。日々のストレスを軽減し、天候に左右されない生活を実現するために、積極的に取り入れたい設備ですね。
電動門扉で実現する快適な出入り

アクトテクニカ株式会社 大型スライド式電動門扉・装飾門扉より引用(https://www.acttechnica.co.jp/car-park/slide-gate/)
車いすを利用する方や足腰に不安がある方にとって、駐車場の門扉の開閉という単純な動作は、見えづらい負担になりがちです。
電動門扉を導入すればボタン一つで門の開閉ができるため、移動や動作の回数を大幅に減らすことができます。さらに、開閉だけでなく施錠もセットで遠隔操作ができる製品も登場し、スマートフォンやリモコンを使ってその場で施錠・開錠、門扉の開閉の流れを済ませられるようになりました。
手元で操作が完了し、玄関にたどり着くまでに何度も移動したり立ち止まる必要がなくなるため、日々の負担が大きく軽減できます。
また、条件が合うならば、地面にレールのないタイプの電動門扉をおすすめします。従来のスライド門扉では、地面にレールがあるため、車いすや歩行器の車輪が引っかかったり、つまずいたりするリスクがありました。
その点、レールのない形式の電動門扉を選べば、通行時のつまずきを防ぎ、よりスムーズで安全に出入りが可能になります。
見た目にもスッキリな印象になり、段差や障害物が少ない動線を確保できるため、介助する方にも動きやすい環境が整います。小さな動作を減らしたり楽にすることで、「めんどくさい」を減らし、より活動的な暮らしへとつながっていきます。
あると便利なアイテム:立水栓

(TOSHIN CORPORATION コルムより引用https://www.toshin-grc.co.jp/business/exterior/lineup/waterfaucet/column/)
バリアフリーとは少し離れますが、あると何かと便利なのが立水栓です。
立水栓とは、地面から立ち上がる形で設置された蛇口のことで、庭や駐車場周りで手やペットを洗ったり、道具や車を洗ったり、植物の水やりをしたりと、日常のちょっとした場面で活躍します。
車いすのタイヤの泥を落としたいときや、外出先で使ったものを洗い流したい時などでも役に立ちます。
設置の際には蛇口の高さやハンドルの形状に気を配りましょう。レバー式の蛇口や軽い力で回せるタイプを選べば、手の力が弱い方や、指先の動きが制限される方でも使いやすくなります。
また、足元がぬかるまないように、水栓の下には水はけのいい排水口やパン(受け皿)を設けると、より衛生的で安全です。
見た目にこだわりたい方は、建物の外観や外構のデザインに馴染むようなおしゃれな立水栓も数多く登場しているので、ぜひお気に入りのものを探してみてください。
使いやすさと見た目を両立させることで、機能性と満足感の高いリフォームとなりますよ。
番外:快適な庭を実現する-人工芝
実は外構リフォームのご相談で、意外と多くの方からお聞きするのが「庭のお手入れ」に関するお悩みです。
「草むしりが大変になってきた」「年々、雑草の勢いに追いつけない」「でも、できれば緑は残したい」、そんな声を多くいただきます。
確かに緑豊かな庭は心が和みますが、その美しさを保つには手間と体力が必要です。特に高齢になってくると毎年のように繰り返される雑草との闘いが、だんだんと大きな負担となっていきます。
そんな方におすすめしたいのが、お手入れが楽な「人工芝」です。ここでは、人工芝を取り入れることによって得られるメリットとバリアフリーの観点からみた活用法をご紹介します。
人工芝のメリット
人工芝は見た目の美しさとメンテンナンス性を両立した、外構リフォームで人気の高いアイテムです。
特に草取りが大変になってきた高齢の方や、バリアフリーを重視された住まいづくりをされているご家庭にとって、多くのメリットがあります。
- 草むしりや水やりが不当で、お手入れが圧倒的に楽
- 年中緑が楽しめて、見た目もきれい
- 足元が柔らかく、転倒リスクを軽減
- 庭を多目的スペースとして使いやすい
天然芝と違って人工芝は、一度雑草対策をして敷いてしまえば草が生えにくく、水やりや刈り込みといった日々の管理が激減します。庭の手入れが辛く感じてきた方にとって、これは大きな魅力です。
また、季節を問わず、いつでも青々した緑の景観を保つことができ、クッション性もあるため、屋外活動の場として、活用しやすいのもメリットです。ちょっとした運動やストレッチをしたり、お子様やペットとの時間も気軽に楽しむことができます。
段差をなくしてバリアフリー化をすれば、家族みんなが自然と集まれる、「もう一つのリビング」にもなるのです。
家族が集まる楽しいスペースを作るためのアイデア
せっかく人工芝を取り入れるなら、ただ敷くだけで終わらせずに、家族みんなが自然と集まりたくなる「使える庭」へと進化させたいところです。
庭は単なる見た目の空間ではなく、外に出て過ごす時間そのものが、心と体の健康を支える大切な役割を果たしてくれます。
日差しを浴びて体を軽く動かしたり、草の感触を足裏で感じたり、風を感じながら会話と楽しんだりと、屋外での活動は気分転換やリフレッシュにもつながり、ストレス軽減や体力維持にも効果的です。
特に高齢の方にとっては、閉じこもりがちな生活を防ぐためにも、「庭に出たくなる工夫」が心身の健康維持に直結します。
- ベンチやウッドデッキを組み合わせて「第二のリビングに」
- 子どもやペットが安心して遊べるスペースに
- 家族イベントや友人とゆったり過ごせる時間を演出する
人工芝の上に屋外用のベンチや低めのウッドデッキを設けると、外でもくつろげる空間ができあがります。
お茶を楽しんだり、本を読んだり、家族や友人の団らんの場にもぴったりです。段差を無くしてフラットにすれば、車いすや歩行器でもスムーズに移動でき、高齢者にとっても使いやすい屋外スペースになります。
クッション性のある人工芝は、転倒しても大きなケガをしにくく、お子様やペットが走り回っても安心な空間です。簡易テーブルやいすを置いておけば、穏やかに見守れる空間になるでしょう。夏場はビニールプールなどを出しても楽しめそうです。
また、気軽にアウトドア気分を楽しめるのもメリットのひとつです。レジャーシートを敷いて天気の良い日に軽食を囲んだりすることで、家の中だけでは得られない開放感や交流の場が生まれます。
「ちょっと外にでようかな」と思ったときにすぐ行動できるのが、お庭の大きな魅力です。工夫を凝らして素敵な時間をお過ごしください。
外構のバリアフリーリフォームの際に大きな関門になる、「段差の解消」については以下のリンクで詳しく説明しています。ご興味のある方は併せてご覧ください。

高齢者向けに、玄関周りのバリアフリーリフォームのポイントをご紹介しています。ご興味のある方は併せてご覧ください。

車いす利用者向けに、玄関周りのバリアフリーリフォームのポイントをご紹介しています。ご興味のある方は併せてご覧ください。

well99株式会社・株式会社トライアングルでは、
バリアフリー・介護リフォームの専門家集団が 「朝起きてから寝るまで」を共に悩み、解決します
バリアフリーリフォームとは家の中を住みやすくする、というでだけではありません。私共は、家の中の障害や不便をなくす事で、よりエネルギッシュに世界と繋がって生活ができることを目標にしております。
「毎日のお出かけが億劫でなくなった!楽しく生活しています」というお声をいただけることが何よりの誇りです。
バリアフリー化の悩み介護リフォームの悩み、なんでもお声掛けくださいませ!