浴室は住宅内でも特に事故の多い場所です。高齢者の安全で快適な入浴や、介護する人の負担を減らすためにもバリアフリーの観点から見るリフォームが必要です。
では、浴室や脱衣室をバリアフリー化しようと思ったらどんなリフォーム(工事)が必要でしょうか?ここでは、浴室や脱衣室のバリアフリーを考えている方向けに、家の中を安全に快適に移動するために必要なポイントやちょっとした工夫を紹介します。
- 増える浴室の事故。交通事故の2倍の件数⁉
- 浴室・脱衣室のバリアフリー化。何をする?
- 浴室・脱衣室のバリアフリーリフォームを種類別に詳しく紹介
増える浴室の事故。交通事故の2倍の件数⁉
令和元年 不慮の溺死及び溺水全体数6901人のうち、4900人が家及び居住施設の浴槽における死亡者数で、全体の約71%まで及びます。
参考として、令和元年の交通事故での死亡者数は2508人。交通事故での死亡者数と比べて家庭内の浴槽での死亡者数は約2倍となっています。
入浴中の事故は持病がない場合や前兆がない場合でもおこるおそれがあります。
バリアフリーリフォームで事故の可能性をできる限り減らすことができますが、0にすることはできません。事故防止のためには本人だけでなく家族や周囲の方が一緒に注意することが大切です。
- 入浴前に脱衣所や浴室を暖めましょう。
- 湯温は41度以下、湯につかる時間は10分までを目安にしましょう。
- 浴槽から急に立ち上がらないようにしましょう。
- 食後すぐの入浴や、飲酒後、医薬品服用後の入浴は避けましょう。
- 入浴する前に同居者に一声掛けて、意識してもらいましょう。
(以上の5項目は「厚生労働科学研究費補助金循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業 入浴関連事故の実態把握及び予防対策に関する研究 平成 24~25 年度総括研究報告書(研究代表者:堀進悟)」P.227「安全な入浴の手引き」(パンフレット)にて推奨されている目安です。)
浴室・脱衣室のバリアフリー化。何をする?
浴室・脱衣室に事故の原因になりやすいものがいくつもあります。バリアフリーリフォームを考えるときは、まずこれらの危険を解消することを考えます。
- 出入口で転倒するのを防ぐ
- 床で足を滑らせての転倒を防ぐ
- 浴槽をまたぐ、脱衣室や洗い場・浴槽内で、しゃがむ・座る・立つの動作を助ける
- 浴槽内での転倒を防ぐ、溺れる可能性を減らす
- ヒートショックなど温度変化による事故を減らす
浴室のバリアフリーリフォームの場合
- 手すりの設置
- 滑りにくい床材へ変更
- 床のかさ上げ
- 浴槽の交換(またぐ動作の負担を軽減する)
- 暖房設備
- 浴槽内での姿勢の補助
- 介助スペースの確保
特に気をつけたいのが浴槽内の事故です。またぐ動作の負担を軽減して転倒を防ぐ他、浴槽内での姿勢保持なども溺水事故の防止として必要になってきます。
脱衣室のバリアフリーリフォームの場合
- 手すりの設置
- 滑りにくい床材へ変更
- 戸・扉の変更
- 脱衣しやすい環境の設定(腰掛台や手すりの設置、タオルや着替え等の物を置くスペースの確保など)
- 暖房器具の設置
- 使いやすい洗面台(車いすご利用の方は車いす専用洗面台)
脱衣室は服を脱ぎ着する場所です。体温の変化が急激に変わりやすい場所のため、対策として暖房器具を設置することをおすすめしています。
また、洗面台のほかに洗濯機などをこの場所に置く方も多い傾向にあります。あらかじめ動線を考えておくと家事の負担も軽減されます。
株式会社トライアングルでは、
バリアフリー・介護リフォームの専門家集団が
「朝起きてから寝るまで」を共に悩み、解決します
バリアフリーリフォームとは家の中を住みやすくする、というでだけではありません。私共は、家の中の障害や不便をなくす事で、よりエネルギッシュに世界と繋がって生活ができることを目標にしております。
「毎日のお出かけが億劫でなくなった!楽しく生活しています」というお声をいただけることが何よりの誇りです。
バリアフリー化の悩み介護リフォームの悩み、なんでもお声掛けくださいませ!
浴室・脱衣室のバリアフリーリフォームを種類別に詳しく紹介
Point1. 手すりの設置[介護保険住宅改修対象]
介護保険の住宅改修では一番多い手すりの設置。浴室内は複雑な動作も多く、床が水で濡れて滑りやすいため設置推奨場所も多くなります。
それぞれの身体機能の状況に合わせて設置していってください。
以下は設置推奨場所です
- 出入口付近(扉を開けて出入りする動作を補助するもの)
- 脱衣室で、服を脱ぎ着する場所
- 洗面台付近
- 出入口から洗い場(シャワー前)まで
- 浴槽付近(またぐ動作を補助するもの)
手すりの設置の施工事例
Point2. 床を改修する
浴室の床を改修する目的は、大きく分けて「滑りにくい床にする」ことと、「段差を解消する」ことの2つがあります。
滑りにくい床にする工事は床材を変更することで達成できますが、段差を解消するための床の改修の場合は床のかさ上げの影響が浴室の他の箇所にもかかるため注意が必要です。
滑りにくい床材へ変更する[介護保険住宅改修対象]
浴室内は水で濡れたり、石鹸や入浴剤などの影響で滑りやすくなりがちです。転倒の事故を防ぐためには、万が一のための手すりと共に滑りやすくなる原因も解消する必要があります。
この原因を解消するためには、床の表面が滑りにくいように加工されたバリアフリーリフォーム向けの床材を検討してください。
バリアフリーリフォーム向けの床材に変更することで、「転倒の衝撃を和らげる」「浴室の床の冷やっとした感覚を和らげる」などの効果も期待できます。
段差の解消 床のかさ上げ・すのこの設置[介護保険福祉用具購入の対象]
浴室の段差の解消を考える時、気にしたい段差の箇所は2つあります。1つは「脱衣室と浴室の出入口の段差」、もう1つは「洗い場と浴槽をまたぐときの段差」です。
これらは「工事で床自体をかさ上げする(ユニットバスに入れ替える場合を含む)」「すのこを敷いて床の段差を埋める」の2つの方法で解消できます。
段差自体は洗い場の床をかさ上げすることで解消できますが、前述の通り、洗い場の床をかさ上げすることで影響するポイントがいくつかあります。一つずつ紹介していきます。
1. 洗い場から脱衣所に水があふれないようにする
床をかさ上げしてフラットになった分、排水に気を使わないと浴室からの水があふれて脱衣所がびしょびしょになってしまいます。
床に勾配をつけて排水口に流れやすくする、出入り口に排水口を設けるなどの工夫が必要です。
2. 洗い場の床の高さを上げた分、浴槽の段差が大きくなる
洗い場の床を高くするとその分、浴槽の底との差が広がります。そうなると浴槽をまたぐ時につんのめって、かえって危険になってしまいます。
浴槽をまたぐときの高さは、洗い場と浴槽の底がほぼ同じ高さ(350~450mm)であることが理想です。
浴室の洗い場の高さを高くするときは、浴槽の深さも同時に考え、場合によっては交換することをおすすめします。
3. 浴槽水栓や、シャワーや蛇口の高さをチェックする
浴槽にお湯をためる浴槽水栓は、お風呂のふたを閉めたときにギリギリかわす位置についています。
浴室の設計や床のかさ上げ方法にもよりますが、床そのものを高くすると浴槽の位置も高くなるため、この浴槽水栓が動かせなくなることがあるため、これに当てはまる場合は浴槽水栓の高さも移動します。
また、洗い場の床を高くするとシャワーや蛇口の高さも影響してきます。風呂桶が蛇口の下に置けなくなったり、水栓の操作がしづらくなったり腰に負担がかかる姿勢になってしまうことがありますので、設計によってはこちらも高さを調節します。
Point3. 戸・扉の変更[介護保険住宅改修対象]
開き戸→引き戸、折れ戸へ変更するなど扉全体の変更のほか、ドアノブ(握り玉→レバーハンドル等)の変更が含まれます。
開き戸などは戸を開けるときに一歩(半身)下げてから戸を引くという動作があるため、身体があおられて転倒する危険があります。そのため、より動作が楽で安全な引き戸・折れ戸等への変更が推奨されています。手すり設置と併せて行うとさらに安心です。
開き戸→引き戸・折れ戸に変更の施工事例
After
Before
画像は浴室と脱衣室の出入口の戸を開き戸→折れ戸へ変更した施工事例です。
開き戸を開ける際の一歩身体を引く動作が無くなったことで、より安全に出入りできるようになりました。
施工事例
Point.4 浴槽の交換[介護保険住宅改修対象:条件あり]
浴槽の交換(在来工法の浴槽からユニットバスへ交換する場合も含む)は、浴槽をまたぐ時の段差の解消・軽減になる場合のみ介護保険住宅改修の対象となります。
浴槽の淵の高さは400mm前後(350~450mm)で、浴槽の淵が垂直に近いものが推奨されています。
浴槽の高さ(深さ)を低くすることで、お湯に肩までつかれなくなるかもという不安があるかもしれませんが、その不安は無用です。
浴槽が浅くなった分、(浴槽の縦の長さを長くとることによって)背もたれに当たる部分の傾斜が緩やかになり、リクライニングのいすを倒したときのような姿勢になります。すると、入浴姿勢が斜めになり浅くてもゆったりつかれるようになります。
Point.5 暖房設備を充実させる[!介護保険住宅改修対象外]
入浴前に脱衣室や浴室を温めることを、消費者庁も推奨しています。入浴中の急死の中には、心疾患や脳血管障害等、溺水以外の病死などが死因であると判断される場合があります。
体温の急激な変動を起こさないために、特に冬場は暖房設備を充実させて対策をしてください。
Point.6 車いす用洗面台~車いすをご利用の方向け~
家の設備には、車いすをご利用の方向けのものが多数ラインナップされています。洗面台もそのひとつです。車いすをご利用の方が使用しやすい高さで、足が引っかからないように足元が広くとられているものがありますので、ぜひご検討ください。
車いす用洗面台の施工事例
↑車いす用洗面台
↑天井走行リフト
画像は、車いす用洗面台の設置事例です。座位の高さに洗面台が合わせられており、足元のスペースも広くとられています。
こちらの事例では、服の脱衣などの介助の負担を軽減するために天井走行リフトも設置しています。
施工事例
神奈川県横浜市 I様邸:シャワーユニット・脱衣室(天井走行リフト・車いす用洗面台)・トイレ(オストメイト) バリアフリー工事【施工事例】
Point.7 浴槽のまたぐ動作を補助する設備
浴槽のまたぐ動作を補助する設備や道具も多数します。こちらではバスボード[介護保険福祉用具の購入の対象]とバスリフトを紹介します。
1. バスボード
番外:入浴用車いすを利用する シャワーユニット~車いすをご利用の方向け~
入浴の際の介助の負担が大きい場合は、入浴用車いすの利用も検討してみてください。
画像は入浴用車いすと、それを利用するために広めのスペースをとったシャワーユニットです。車いす⇔入浴用車いすの移乗や脱衣を助ける天井走行リフトも設置しています。
番外:特殊浴槽を利用する(施設向け)~車いすをご利用の方向け~
入浴の介助は負担が大きいもの。何人もの入浴の介助をする場合には、介護用の特殊浴槽という選択肢があります。浴槽の大きさや昨日まで種類は様々です。
ストレッチャーやいすに乗ったまま浴槽に入れるもの、身体の洗浄まで助けてくれるものまでありますので、ご利用者様それぞれの状態に合わせて導入の検討をしてみてください。
その他、家の中のバリアフリーをしたいときに知っておきたいポイントをまとめました。ご興味のある方は下記のリンクをご覧ください。
株式会社トライアングルでは、
バリアフリー・介護リフォームの専門家集団が
「朝起きてから寝るまで」を共に悩み、解決します
バリアフリーリフォームとは家の中を住みやすくする、というでだけではありません。私共は、家の中の障害や不便をなくす事で、よりエネルギッシュに世界と繋がって生活ができることを目標にしております。
「毎日のお出かけが億劫でなくなった!楽しく生活しています」というお声をいただけることが何よりの誇りです。
バリアフリー化の悩み介護リフォームの悩み、なんでもお声掛けくださいませ!