年齢を重ねると、今まで楽しんでいたはずの庭仕事やガーデニングが、いつの間にか負担に変わってきてはいませんか?
「草むしりがつらい」「膝や腰がつらくて庭に出るのがおっくう」という悩みを抱える方にお勧めしたいのが、「手入れがラクな庭」への見直しです。
今回は、雑草と無縁の庭づくりの基本から、手間を減らして庭で快適に過ごせるアイデアまで、シニア世代にも優しい庭づくりのヒントをご紹介します。
これからの暮らしに備えたい方、今ある庭をもっと使いやすくしたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
道路から玄関に入るまでのアイデアをお探しの方は、以下のリンクを参考にしてください。


車いす利用の方は以下のリンクをご覧ください。

高齢者の方は以下のリンクを併せてご覧ください。

雑草が庭仕事をつらくする3つの理由

シニア(55~79歳)のリフォーム調査2023レポート(生きかた上手研究所)
2024年4月1日に発表された「シニア(55~79歳)のリフォーム調査2023レポート(生きかた上手研究所)」によると、「あなたは、今のお住まいについて、年齢を重ねることで、今まで感じなかった不便や不満、不安を感じるようになったことがありますか。(複数回答可)」という問いに対して、最も多かった回答が「庭の手入れが大変」で、22.3%、を占めました。
参考資料

高齢になると、庭の手入れは身体的にも精神的にも負担が大きくなっていきます。
特に次の3つの理由で「もう限界」と感じる方が増えています。
- 加齢による身体の負担(腰・膝など)
- 作業中の熱中症リスク
- 雑草の繁殖スピードに追い付けないストレス
ガーデニングは、しゃがんで作業することが多く、日中炎天下の中で長時間の作業をすることも少なくありません。中でも熱中症は命にかかわる危険もあるため、特に注意が必要です。
また、お庭の手入れで時間がかかる原因の1つが「雑草(草むしり)」です。抜いても抜いてもすぐに生えてくるの雑草に、ストレスを感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで次の章から、こうした悩みを解消するための「安全で手間の少ない庭のつくり方」をご紹介していきます。
雑草対策の基本は「土の面積を減らす」こと
雑草は土に日光が当たることで育つため、庭にある「土の見えている面積」をいかに減らすかが、雑草対策の第一歩です。特に、草が生えやすい裸地や、広く植栽されたスペースをそのままにしておくと、あっという間に雑草が繁殖してしまいます。
まずは対策として、雑草を生やしたくない場所をコンクリートやタイル等の舗装材などで、しっかり覆う方法を検討しましょう。土の露出を無くすことで、雑草の発生を抑えることができます。さらに防草シートと併用して舗装することで、雑草の抑制効果が格段に高まります。
一方で、砂利を敷くという方法もよく見られますが、高齢者の庭にはあまりおすすめできません。
砂利を敷くことで、杖や車いすでの移動が不安定になりやすく、転倒のリスクが高まるためです。
安全性と手入れのしやすさを両立するなら、まずは庭の手入れが必要な範囲を減らし、防草シート+コンクリートまたはタイル舗装の組み合わせでお庭を再構成することがおすすめです。
「見せる庭」と「使う庭」を分けるゾーニングのすすめ
庭を「すべて同じようにきれいに保とう」とすると、どうしても手間をかかりすぎてしまいます。そこでおすすめなのが、「観賞用のスペース(見せる庭)」と「日常的に使う庭(使う庭)」をゾーニング(用途別に区分け)する考え方です。
例えば、植栽やガーデニングを楽しみたいエリアは一部に限定し、その他のスペースは舗装やウッドデッキなどにすることで、日々のお手入れの負担がぐっと軽くなります。
また、季節ごとの変化を手軽に楽しみたい場合は、地植えではなく鉢植えを活用するのもおすすめです。移動や植え替えがしやすく、気軽に景色を変えられるうえに、管理も簡単です。スペースが限られていても、メリハリがある庭づくりが可能になります。種類を選べば、野菜なども鉢植えで育てられますよ。
「すべてを完璧に」から「必要なところだけ手を入れる」庭へ。メリハリのあるゾーニングをすると、庭のある暮らしがもっと楽しくなります。
手間を減らすなら「鉢植え」と「プランター」
雑草の悩みや土の手入れの大変さを考えると、思い切って庭の土の露出をなくし、ガーデニングは鉢植えやプランターで楽しむというのも、十分に現実的な選択肢です。
鉢植えには植え替えなどの作業が伴いますが、庭に直接植えるよりも管理がしやすく、雑草の手入れも限られた範囲ですみます。水やりや剪定などのお手入れも限られた範囲で済むため、日々の負担をグッと楽にできるようになります。
また、腰や膝への負担が気になる方には、「高めの鉢台」や花台を使う事で、かがまずに作業できる高さに調整することも可能です。立ったままの姿勢で手入れができるので、身体にやさしく、長くガーデニングを楽しむ事ができます。
育てやすい植物を選ぶ「省管理グリーン」のすすめ
「庭づくりをしたいけれど、手入れに時間も体力もかけられない」という方におすすめなのが、手間の少ない植物「省管理グリーン」を選ぶ工夫です。
例えば以下のような植物は、剪定や掃除、病害虫対策などの手間が少なく、扱いやすい種類です。
特徴 | 植物の例 |
---|---|
成長が穏やか・コンパクトな低木 | アベリア、ボックスウッド等 |
剪定や落ち葉が少ない種類 | オタフクナンテン、コルジリネ等 |
グランドカバープランツ | リュウノヒゲ、タイム、アジュガ、グレコマ、セダム等 |
丈夫で病害虫に強い植物 | アガパンサス、アナベル、トレニア、ラベンダー、セダム類 |
花期が長い一年草 | インパチェンス、ペンタス等 |
植えっぱなしで育つ球根類 | スイセン、ムスカリ、アリウム等 |
虫が発生しにくい植物 | ローズマリー、ユーカリ等 |
庭にシンボルツリーを作ったり、花を愛でたり、庭の楽しみ方は無限大です。植える花木はこだわりつつも、手間の少ない植物を選ぶことで、水やり・剪定・草取りの手間を減らしながら、見た目も楽しめる庭をつくることができます。
スプリンクラーを設置する-水やりの負担を最小限にする
鉢植えや花壇の多い庭では毎日の水やりが大きな負担になります。
特に近年の猛暑では、朝夕の2回、水を与える必要がある場合もあり、体力的にも時間的にも大変です。
そうした負担を減らすために、自動で水を撒いてくれるスプリンクラーや灌水(かんすい)システムの導入を考えてはいかがでしょうか。
植物が多いご家庭では以下のようなシステムがおすすめです。
- タイマー付きのスプリンクラー:決まった時に自動で散水します。留守中や旅行中も安心です。
- ドリップ式灌水システム:根本に直接水を供給するため、水を無駄にせず効果的に水やりをすることができます。
そこまで大がかりな設備が難しい、という場合でも、水道を庭まで引いて置いたり、止水栓を設けておくだけで、水やりの手間は大きく軽減できます。ホースを遠くから引っ張ってくる必要がなくなり、日々の作業がグッと楽になるはずです。
水やりの工夫ひとつで、庭を維持する負担が軽くなり、ガーデニングをもっと楽しめるようになります。
生垣をブロック塀やフェンスに変える
毎年の刈り込みや剪定、落ち葉の掃除など、生垣の管理は思った以上の手間がかかるものです。年齢を重ねるとその負担はさらに大きくなり、管理が行き届かないと、生垣が隣家の敷地に越境したり、道路側にはみ出して通行の妨げになり、トラブルやクレームの原因にもなりかねません。
また、生垣にはアブラムシや毛虫などの害虫が発生しやすいという問題もあります。生垣を撤去するだけで、虫の発生を抑える効果もきたいできます。
もし、生垣の管理の手間や、害虫に悩んでいるのなら、思い切って生垣を撤去してブロック塀やフェンスに変えるリフォームを検討してはいかがでしょうか。
ブロック塀やフェンスは、生き物である植物と違い、日常のメンテナンスがほぼ不要になります。
設置にあたっては、採光や風通し、目隠し効果などの配慮が必要ですが、特にフェンスは種類も豊富で、デザイン性の高いものを選べば、庭全体の印象も大きくアップします。
庭の手入れの負担を減らし、すっきりとした外観を保ちたい方は、生垣からの切り替えをぜひ検討してみてください。
「人工芝」のやさしさと注意点
一年中、美しい緑が楽しめる人工芝は、手入れが大変な天然芝の代替として注目されています。芝刈りの手間が不要で、虫もつきにくいため、高齢者のいるご家庭には最適な選択肢です。
最近では、見た目や質感がリアルな高品質な人工芝も増えており、「人工感が強くて景観が損なわれる」といった以前のイメージは、かなり改善されてきました。
また、使用環境や製品の品質にもよりますが、丁寧に清掃や手入れをおこなえば、10年ほど美しい状態を保つことも可能です。見た目の美しさだけでなく、クッション性のあるタイプを選ぶことで、転倒時の安全性も高まります。
ただし、人工芝にはいくつかの注意点もあります。
特に夏場の高温による表面温度の上昇には注意が必要で、直射日光の多い場所では遮熱タイプの人工芝や打ち水などの対策があると安心です。
また、しっかり固定する方法を選ばないと、浮いてしまったりズレが生じる可能性があるため、設置前の検討も大切です。
おしゃれで安全、手間いらずな庭づくりを目指すなら、人工芝は魅力ある選択肢のひとつです。
ウッドデッキやタイルテラスで「歩きやすい庭」へ
庭のうち、植栽をしないスペースには、ウッドデッキやタイルテラスの設置がおすすめです。どちらもデザイン性が高く、レイアウトの自由度が高いため、庭全体をスタイリッシュに仕上げることができます。
タイルは滑りにくい素材を選べば安全性も高く、ウッドデッキも含めて掃除やメンテナンスがしやすい点も魅力です。どちらもスロープの設置との相性がよく、バリアフリー対応の庭としても最適です。
ウッドデッキを採用する場合は、防草シートを併用することで、雑草の発生を防ぐことができ、日々の管理負担も減らせます。
タイルテラスを採用する場合は、仕上がりがおしゃれで耐久性もありますが、コンクリート舗装に比べて費用が高くなる傾向にあるので、予算には少し余裕をもった計画が必要です。
ウッドデッキやタイルテラスを取り入れると、屋外用のテーブルやいすを置いて「第2のリビング」として活用したり、お子さんやお孫さんが遊べる場所としてとても便利です。
自然と人が集まることで、庭が家族やご近所とのコミュニケーションの場としても活躍します。
暮らしの中に「使う庭」を取り入れて、心地よい交流の生まれる空間を作ってみてはいかがでしょうか。
「安全設計」で庭時間をもっと快適に
せっかくの庭も、段差や直射日光、暗がりがあると、安全面でも不安が大きくなり、気軽に使えなくなってしまいます。そこで大切なのが、安心して庭で過ごせる「安全設計」です。
まず基本となるのは、庭の段差をできるだけなくし、フラットに整えることです。これにより転倒のリスクを減らし、杖や車いすを使用する方もスムーズに移動できるようになります。
日中の庭作業や休憩が多くなりそうな場合は、オーニングやパラソルなどの庇(ひさし)や屋根代わりのアイテムを取り入れることで、直射日光を避け、熱中症リスクを軽減できます。
また、夜間の安全対策には、足元照明やセンサーライトの設置がおすすめです。足元が見えるだけで、転倒リスクはグッと下がります。
さらに、移動経路に応じて手すりを設置したり、使いやすい動線をリフォーム段階で検討しておくことも重要です。将来的に動きづらくなることを見越した設計は安心と使いやすさを両立できます。
庭は、くつろぎや交流の場であると同時に、日常の生活動線の一部でもあります。だからこそ「安全」で「快適」な庭づくりを、今のうちから意識しておきましょう。
道路から玄関に入るまでのアイデアをお探しの方は、以下のリンクを参考にしてください。


車いす利用の方は以下のリンクをご覧ください。

高齢者の方は以下のリンクを併せてご覧ください。
