1980年代ごろ、都市部を中心にいわゆる狭小住宅がたくさん建てられました。現在これらの住宅が築30~40年になり、リフォームの対象となっています。
リフォームの目的は多数あるかと思いますが、建物の老朽化対策をしたり、省エネや耐震対策をしたりとしていく中で、将来の備えとしてバリアフリー対策も視野に入るようになってきたころかと思います。
年齢を重ねて足腰が弱ってくる、あるいは車いす生活になった時のことを考えると、「段差の解消」のバリアフリーリフォームは避けて通れません。上下階の移動が困難になると、2階がメインの居住スペースになっている家は外出が億劫になってきてしまいます。
活動的で質の高い生活を長く続けるため、上下階の移動をどうやって解決するかを、まだまだ健康な50~60代ごろに考えておくと安心です。
今回は段差を解消する手段のうちの1つ「ホームエレベーター」について、設置可能の可否を大きくわける設置スペースに焦点をおいて解説します。
ホームエレベーターの費用やチェックしたいポイントは下記のリンクで詳しく説明しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。


ホームエレベーターの設置スペースはどれくらい必要?基本サイズを解説
結論から言うと、ホームエレベーターを設置するには、一般的に約1坪程度のスペースがあれば設置ができます。
ホームエレベーターには2人乗りと3人乗りがあり、定員数によってかごの大きさや必要な設置スペースが変わります。メーカーによって多少の差がありますが、かごの大きさの目安は以下の表のとおりです。
定員数 | カゴの大きさ |
---|---|
2人乗り | 幅約61cm~120cm × 奥行き約61cm~120cm |
3人乗り | 幅約85cm~100cm × 奥行き約120cm~150cm |
注意しておきたいのは、上記の表やカタログのわかりやすい場所に記載されている寸法が「かごの大きさ」であることです。そのままの数字が設置スペースの寸法になるわけではないため、ある程度目星をつけたら、業者に確認してください。
ホームエレベーターを自宅に後付けする方法としては「改築(家の中に設置する)」と「増築(家の外につける)」方法があります。
「押入れ」「吹き抜け」「子供が独立した後の空き部屋」「庭(増築)」「庭にある物置(増築)」などをうまく活用して、ホームエレベーターの設置スペースを確保しましょう。
ホームエレベーターの設置の条件について詳しく知りたい方は以下のリンクをご覧ください。

狭小住宅でもホームエレベーターは設置可能?
都市部に集中する狭小住宅の場合はスペースの確保が難しいですよね。最近は狭小住宅向けのホームエレベーターのモデルも開発され、ホームエレベーター設置の難易度も低くなりました。
狭小住宅向けのホームエレベーターは、畳1畳分あれば設置できるモデルもあり、押入れのスペースなどを活用してホームエレベーターを設置する方も増えています。最小の設置スペースで導入したい場合は、狭小住宅向けのホームエレベーターをおすすめします。
ホームエレベーターを設置が可能かどうかに大きく関わってくる要素は以下の4つです。
- 設置に必要なスペースを確保できるか
- 建物が、エレベーターを設置できるだけの強度があるか
- 屋内に出入口を作れるか
- 既存住宅の建築確認検査済証があるか(※)
※建築確認検査済証がない場合は、法律に適合するために構造計算が必要になります。お近くの建築士事務所に相談してください。
設置には、建物の強度など個人では確認できない要素も多いため、ある程度スペースを決めたらホームエレベーターを扱う工務店や建築士事務所等に相談に行く必要があります。
主要メーカーの狭小住宅向けホームエレベーターを紹介します
ホームエレベーターは多数ラインナップがありますが、ここでは狭小住宅向けにラインナップされているホームエレベーターを紹介します。
大手メーカー2社のホームエレベーターを紹介していますが、大きく性能が変わることはありません。設置スペースとデザイン性、近くに取扱業者があるか、近くにメンテナンス業者があるかなどを確認して決めると良いでしょう。
コンパクトタイプのホームエレベーター
ジョイモダンS200Ui (Panasonic) 2~3人乗り

(https://sumai.panasonic.jp/elevator/home-elevator/product/1212joymodern/index.html)より引用
ルーム内奥行 最大1040mm
【業界最小】ピット深さ200mmを実現!建築工事の省施工により工期短縮・コスト削減が可能です。
リフォームに最適な2階専用。低価格の3人乗り。
小型自走式車椅子対応。介助者の同乗はできません。
定員 | 3人乗りまたはゆとりの2人乗り用200kg | |
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商品名 | 1212ジョイモダンS200Ui | |
油圧式 | ||
![]() |
||
特長 | ピット深さ業界最小※1200mm ルーム奥行1040mm リフォームに最適な2階専用低価格モデル |
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ルーム内俯瞰図 | ![]() |
|
ルーム内有効寸法※2単位:mm | ![]() |
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昇降路最小内法※2単位:mm①間口②奥行き | ![]() |
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ご利用可能 車いす※4 |
介助者が 同乗しない場合 |
小型自走式車いす 全幅700mm×全長910mm以下※7 |
介助者が 同乗する場合 |
ー | |
最小ピット寸法 | ![]() |
|
昇降行程※5最大停止数 | 3.3m以下2カ所 | |
速度 |
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電気料金※8 1日20回使用(10往復)の場合 |
約490円/月 (寒冷地仕様は除く) |
|
メンテナンス料金※9 (定期点検 年1回/年2回 年額一括払い) |
52,800円/70,400円(税抜48,000円/64,000円) | |
防火区画竪穴区画 | ー |
詳細はこちら↓(メーカーの商品ページに移動します)
スリムモダンUi (Panasonic) 2人乗り
洗練されたモダンデザイン ルーム内奥行最大950mm!省スペース設計の普及モデル2人乗り。
小型介助式車いす対応。詳細はこちら↓(メーカーの商品ページに移動します)
クラシックUi (Panasonic) 2人乗り
落ち着きのある木質調デザイン ルーム内開口最大730mm ルーム内奥行最大950mm!普及モデル2人乗り。
小型介助式車いす対応。詳細はこちら↓(メーカーの商品ページに移動します)
スイ~とホームS ファミスリム (三菱日立) 2人乗り
都市部の狭小住宅や既設住宅に
おすすめです。
クリーン仕様は、操作パネルボタン・乗場ボタン・手すり(オプション)に処理を施しています。
※ 3人乗りホームエレベーターにおいて。2024年3月現在 三菱日立調べ
ファミリーとの比較
3人乗りスリム設計
詳細はこちら↓(メーカーの商品ページに移動します)
スイ~とホームS コンパクト (三菱日立) 2人乗り
大人2人が使用できる省スペースタイプ。
建物設計の自由度がアップします。
詳細はこちら↓(メーカーの商品ページに移動します)
畳1畳のスペースで設置できるホームエレベーター
押入れなどを利用して設置したい方は、下記で上げるホームエレベーターが対象になることが多いだろうと思います。押入れ・物入れの形に合わせてホームエレベーターを選んでください。
フィットモダンUi 2人乗り
広々とした乗り場入口幅 【業界最長】乗り場出入口幅最大1000mm 畳一枚に納まるコンパクトな横長モデルの2人乗り。
小型自走式六輪車いす対応。詳細はこちら↓(メーカーの商品ページに移動します)
ジョイモダンS200Ui 2人乗り
リフォームに最適な2階専用 【業界最小】ピット深さ200mm 畳一枚に納まるコンパクトな横長モデルの2人乗り。
簡易型介助式車いす対応 詳細はこちら↓(メーカーの商品ページに移動します)
パーソナルUi 1~2人乗り
ルーム内奥行最大900mm 畳一枚に納まるコンパクトな縦長モデル2人乗り。
サイズ違いの1208 0812は、畳一枚よりさらにコンパクトな横長・縦長モデルの1人乗りです。詳細はこちら↓(メーカーの商品ページに移動します)
スイ~とホームS ジュニア (三菱日立) 2人乗り
設置スペースはわずか畳一枚分の薄型&ワイド。
クリーン仕様は、操作パネルボタン・乗場ボタン・手すり(オプション)に処理を施しています。
詳細はこちら↓(メーカーの商品ページに移動します)
ホームエレベーターの設置スペースを確保するための設計ポイント

panasoniv ホーム/小型/共同住宅エレベーター総合カタログ
過去、ホームエレベーターを設置した人たちは下記の方法で設置スペースを確保しました。
- 子どもたちが独立したので、空き部屋を利用する
- 二世帯から単世帯になったので、押入れを活用する
- 階段部分を利用する(※ただし、階段の移設が必要)
- 吹き抜けを利用する
- 車庫の一角を利用する
- 物置(外)を利用する
「狭小住宅で庭など建物の外側にスペースをとることは難しい」という方は、家の中にホームエレベーターを設置するプランがおすすめです。
逆に「家の外にスペースがあって現在のお部屋のレイアウトを変えたくない」と考える方は、家の外にホームエレベーターを増築して設置するプランがおすすめになります。
当たり前のことにはなりますが、エレベーターは縦に昇降路をつくるので、階層違いで重なる位置にスペースを確保します。これが意外と難しいので、柱や壁の位置等、必要な要素を勘案するのに、専門家の意見が必要になります。
狭小住宅でホームエレベーターを設置する際の注意点
バリアフリーリフォームとして、あるいは将来の備えとして、ホームエレベーターを設置するときに後悔しやすいことは3点あります。
- 車いすを利用したいのに、車いすが乗る分や介助者のスペースが足りなかった
- ホームエレベーターを使わなくなった
- 本格的に使用する前に、エレベーターの寿命がきた
以下で詳しく説明してきます。
車いすを利用したいのに、車いすが乗る分や介助者のスペースが足りない
車いす利用を想定する場合、ホームエレベーターは3人乗りを選ぶケースがほとんどです。2人乗りのホームエレベーターでも使えないわけではないのですが、使える車いすの種類やサイズが限られています。
三菱日立やPanasonicのカタログなどは利用できる車いすのサイズが記載されています。車いすを利用することを前提としているならば、あらかじめお使いの車いすのサイズを確認しておいてください。
また、将来ホームエレベーターを使うかもしれないからと、備えとして「新築・大規模リフォーム」の中でホームエレベーターの設置をお考えの方は、「今」導入するよりもスペースだけ確保しておいて建物の強度を調整しておく方法をおすすめします。
確保したスペースは押入れなどの物入れとして使い、必要になったタイミングでホームエレベーターを設置する方が耐用年数を考えるとお得です。ご検討をおすすめします。
ホームエレベーターを使わなくなった
家族のために導入したけれど施設などに入居して使わなくなった、という理由で設置を後悔するケースがまれにあります。
かといって、足腰を痛める場面や介護がいつ必要になるかを想定するのは難しいです。本格的に必要になってからエレベーターの設置を手配するのは手間と時間がかかるため、設置のタイミングを計るのは困難と言えます。
介護に関わらず、日常で荷物を運んだり、家事にうまく活用したりという方も多いので、使用しないリスクを避けたい場合は生活や家事の動線を考えて設置をするといいでしょう。
本格的に使用する前に、エレベーターの寿命がきた
将来に備えてホームエレベーターを設置する場合は、耐用年数と自身や家族の年齢を考慮して設置時期を考えるとよいと思います。
ホームエレベーターの法定耐用年数は17年です。そして、ホームエレベーターを設置をしていても健康なうちは、意外とホームエレベーターを使いません。
若いうちにホームエレベーターを設置して、日中は仕事でほとんど家におらず使用する機会がないまま年齢を重ねて、「いざ必要になった」というときにエレベーターの寿命がきたというケースがあります。
ホームエレベーターは頑丈な設備ですので、撤去費用も高額です。
ざっくりでもいいので、どれくらいの時期に必要になりそうかを考えておいてください。
新築戸建てであれば10年ほどで、エレベーター以外の場所(キッチンや浴室、トイレなどを含め様々)の大きなリフォームをするタイミングがあります。今すぐ設置が必要でないと感じるならば、その大きなリフォームのタイミングがホームエレベーター設置検討のねらい目かと思います。
その時、ホームエレベーターの必要性を感じたら設置できるように、準備をしておくとよいと思います。
既に一度説明していますが、今すぐホームエレベーターが必要ない人は、設置スペースをあらかじめ確保しておき、エレベーターを設置するために必要な分、建物の強度を調整しておくことがおすすめです。
ホームエレベーターを設置する前は押入れなどに利用できるようにしておくと、無駄なスペースもなく設置時にスムーズに施工ができます。
まとめ:最適な設置スペースを確保してホームエレベーターを導入しよう!
現在は狭小住宅向けのコンパクトなホームエレベーターが増え、設置のハードルが低くなりました。畳一枚分あれば、2人乗りのホームエレベーターが設置できます。
ホームエレベーターは高額なものです。設置を後悔しないために、いつどのように利用するかを想定して設置から撤去までを具体的に考えておくと安心です。
使わなくなった部屋、押入れなど意外なところに設置可能なスペースがあります。狭小住宅だからとあきらめずに、専門家に一度相談してみることをおすすめします。
ホームエレベーターの費用やチェックしたいポイントは下記のリンクで詳しく説明しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。


災害時・停電時、ホームエレベーターはどんな対策をされているか、自分たちで備えておくことがあるかを知りたい方は、下記のリンクで詳しく説明しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。
